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教育業界のM&A動向

2021年12月10日

カテゴリー:業種

業種分類:教育

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少子化、学習指導要領の改定、IT・グローバル化など教育産業を取り巻く環境は日々変化しており、こうした変化を受けてM&Aが活発に行われております。教育業界は小学・中学・高校生向けを中心に幼児〜社会人と幅広く、裾野の広い業界ではありますが、M&Aの観点から可能な限り広くその動向を追ってみました。

業界概観

教育業界の市場規模は2020年で約3兆0,410億円(企業売上ベース)と2019年比0.7%増となっています。

業態別に規模感を眺めてみると、最も大きな市場を占めているのは学習塾・予備校で、2020年売上は1兆0,144億円となっており、2019年対比2.4%増。次に大きな市場を占めているのは職業・教育支援施設(主に官公庁・企業・事業所向け教育・研修)で、2020年売上は3,301億円、2019年対比は3.8%減となっております。そして、スポーツ・健康教授業、外国語会話教授業と続いていきます(出所:総務省統計局「経済構造実態調査」(注:各年6月に調査))。

対象市場別に見ると、文部科学省の平成30年子供の学習費調査の学校外活動費の総額が、小学校〜高校生で1兆9,268億円、幼稚園で2,495億円と未就学児市場も相応の規模感を示しています。特にこの未就学児市場については、子供一人当たりの学校外教育費(月額)が2016年の4,164円から2020年9,253円、2021年7,797円と2020年までの4年間で年率22.1%、2021年までの5年間で年率13.3%と高い伸びを示したことが特徴的です(各年の1月時点調査。出所:ソニー生命保険株式会社「子どもの教育資金に関する調査2021」)。

社会人市場においては、総額で3兆5,000億円程度の市場であることが推定されるものの(厚生労働省「令和2年度能力開発基本調査」より当社推定)、約2兆7,000億円がOff-JT(Off the Job Trainingの略。職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習)として、企業向け研修サービス企業が代表的な受け皿となるものと考えられます(Off-JTには、専門的または職能的研修も含まれるため、受け皿の裾野は相応に広いものと考えられます)。残りが自己啓発及び資格取得へ向けられていると考えられます。この自己啓発については、企業の自己啓発費用支援が50%超の割合を占めるものと考えられます。

本稿では、教育業界を代表する業界として、学習塾・予備校業界、企業向け教育・研修サービス業界を中心に、各業界の状況とM&A動向について考察していきます。

学習塾・予備校業界の状況とM&Aニーズについて

少子化により市場規模の縮小が懸念される学習塾・予備校業界であるものの、上記記載の通り、直近はほぼ横ばいの規模で推移しているものと見られています。少子化による生徒数減少を補っているものとして、①個人指導方式の増加、②インターネット活用、の2つによる収入増と考えられます。①の個人指導方式の増加は、2020年の個人指導方式の受講生数が学習塾受講生全体の34.8%と2019年の32.2%から増加していることから読み取れ、②のインターネット活用については、インターネットを活用した指導方法の採用を行なっている事業所の割合が2020年に42.8%と2019年の27.9%から大きく上昇していることと、教材費売上の総額が2019年の643億円から755億円と増加していることから見て取れます(出所:総務省・経済産業省「経済構造実態調査」)。

個別指導方式については、講師のパート、アルバイト依存率の高い学習塾業界においては、受講生と同様に減少傾向にある大学生・大学院生数の中で、講師数の確保及び人件費が一定以上の市場規模になるとボトルネックになりうることが指摘されています。そのため、個別指導方式の広がりは需要側である受講生のニーズと合わせて、一定の割合で頭打ちとなることが予想されます。

他方、インターネット活用、特にAI活用は、学習塾業界において大きなテーマとなっており、カリキュラム編成や教材提供、コーチングなど、その幅広い活用領域と、生徒に合わせたカスタマイズ等、同業他社との差別化が可能であることや講師確保及び人件費といったボトルネックとなる課題が相対的に小さいため、今後益々の導入、活用が見込まれます。その一方で、インターネットを活用したサービス提供にはインフラ投資やデータ収集による機械学習の効率性、精度等から規模の大きな事業者がより大きなメリットを享受できる可能性が高く、今後はこうしたインターネット活用における規模の経済を追求するためにM&Aを活用するといった動きも強まってくるものと思われます。

学習塾業界においては、長らく少子化を背景に、ドミナント戦略や多ブランド展開、ブランド力の向上、固定費の効率化などの動機により、同業他社を対象とするM&Aが活発に行われてきました。この動きは現在も継続しており、具体的には、2021年10月の九州を中心に展開する小学、中学、高校受験の英進館株式会社による、中国地方を中心に「田中学習館」を展開する株式会社ビーシー・イングスの買収といった事例があります。2020年11月に公表された、「森塾」などを運営する株式会社スプリックスによる株式会社湘南ゼミナールの買収においては、個別指導ー集団指導、中学、高校受験ー大学受験といった業態補完、東京ー神奈川といったエリア補完のみならず、ICT投資や研究開発における連携もその目的として掲げられており、上記の動きがすでに始まっていることを示しています。

その他のテーマとしては、「英語教育」、「プログラム教育」、「幼児(未就学児)教育」が挙げられます。「英語教育」については、2020年度からの小学校高学年での英語の教科化、2022年度からの都立高校入試におけるスピーキングテストの導入、2020年度開始の大学入学共通テストにおけるリスニングの配点上昇、大学入試における記述式の出題の広まり、民間英語試験(英検、TOEIC、TOEFLなど)の活用(2025年以降の大学入学共通テストへの導入は2021年7月に見送りが発表されたが、個別入学試験については今後この傾向が強まる見通し)など、英語教育の低年齢化、実用的な英語教育化が進展しています。民間英語試験の活用については、すでに一部の大学が民間英語試験における一定水準以上の成績を出願要件とするなど、民間英語試験で試される「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能の習得が重要になっています。これらは、従来の「文法訳読」「読解偏重」といった入試を念頭においた講義方式から、より実用的な教育が学習塾においても求められるものと考えられます。2020年5月に公表された株式会社城南進学研究社による小学生を対象としたネイティブ英語環境を提供する学 童保育施設「トレスターインターナショナルアフタースクール」を運営するTrestar株式会社の子会社化の公表資料においても、「未就学児から社会人までの英語教育につきまして、積極的な教室 展開やM&Aによる事業の拡大を進めております」との言及があり、入試における英語のあり方の変容に伴い、学習塾による英語教室、英語学校のグループ内への取り込みについても今後ニーズが強まってくるものと思われます。

「プログラム教育」についても小学校における2020年度からの必修化を皮切りに、2021年度から中学校、2022年度から高校と順次必修化されています。それに伴い、2025年1月の大学入試共通テストからプログラミングやデータ活用を含む「情報」が科目として追加されることになっています。2021年3月に独立行政法人大学入試センターから公表されている「情報」のサンプル問題を見ると分かるように、プログラム的思考力を問うことが一つの主眼だと思われるため、プログラムに慣れておく教育メニューを提供することも学習塾には問われてくるものと思われます。また、プログラム教育以外にも直近注目されている「STEAM教育」に関しても取り込むニーズは存在するのではと思います。

「STEAM教育」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の各分野での学習を実社会での課題解決に活かしていくための分野横断的な教育と定義されております。より具体的には、「知る」と「創る」の循環を通じて、自立的な学習を促していく教育スタイルと表現できるかと思います。上記の定義を見ても分かるように、テクノロジー(プログラムやAI等の情報処理技術)は重要な構成要素であり、今後テクノロジー教育を中心に、上記の他の分野の教育と組み合わせて、創造的な人材を育成する教育が益々盛んになってくると思われます。2021年11月に公表された、オンライン証券などオンライン金融サービスを運営するマネックスグループ株式会社による幼児・小学生向けSTEAM教育スクール「ステモン」などを運営する株式会社Vilingの完全子会社化は、異業種による参入ではありますが、あらためてSTEAM教育が注目される出来事でした。

このSTEAM教育とも関連しますが、「幼児(未就学児)教育」は冒頭の業界概観でも見たように、市場規模が拡大している分野です。背景としては、国立・私立小学校への志願者増に見られるように幼児教育への関心が高まっていることに加えて、令和元年(2019年)10月1日から始まった幼児教育・保育の無償化により、家計において学校外教育に回せる資金を増やせるようになったこともさらに幼児教育市場の拡大に繋がっていくものと思われます。ただし、この幼児教育市場は、必ずしも受験と結びついているものではないため、スポーツ教室や音楽教室などの習い事や、英語、知育教育など幅が広いことが特徴です。そのため、規模を伴った参入が困難であるという側面もありますが、2018年12月公表の株式会社城南進学研究社による乳幼児・児童向け教室運営の株式会社主婦の友リトルランドの子会社化、2020年12月には中国地方を中心に学習塾等を展開する株式会社5コーポレーションが株式会社FREEMINDより子ども英語教室Lepton新井口教室を譲り受け、毎日個別塾5-Daysに併設するかたちで子ども英語教室Leptonを広島県内に展開していくことを公表するなど、M&Aの事例が継続的に見られる領域でもあります。

また、逆に主に保育所を運営する株式会社さくらさくプラスが2021年6月に中学受験をメインに学習塾を展開する株式会社VAMOSの子会社化を公表するなど、幼児教育から学習塾への参入といった動きも見られます。

企業向け研修サービス業界の状況とM&Aニーズについて

冒頭の業界概観で述べたように、緩やかな拡大を見せてきた企業向け研修サービス業界ですが、内容には緩やかな変化が見られます。まず、労働者に求める能力・スキルとして、一般的なIT知識(OA・事務機操作など)を答えた企業の割合が2019年18.9%から2020年27.1%、専門的IT知識(システム開発・プログラムなど)を答えた企業の割合が2019年5.9%から2020年7.3%とIT関連が伸びております。また、チームワーク、協調性、周囲との協働力が2019年の47.1%から2020年の52.8%、定型的な事務・業務を効率的にこなすスキルが2019年の9.3%から2020年の13.7%と増加しているのに対して、マネジメント能力・リーダーシップが2019年の50.8%から2020年の30.5%、課題解決スキルが2019年の35.3%から2020年の30.9%と大きく減少しています。このことから、ITが必須のスキルとなっていることに加えて、働き方、組織のあり方がよりフラットになり、周囲との協調性、協働の能力がより求められるようになってきていることが分かります。

また、Off-JT(Off the Job Training)を今後3年間で増加させる企業の割合は2020年において18.7%に留まる一方で、自己啓発支援を増加させる企業の割合は24.1%とより集団色の強いOff-JTよりも個別色の強い自己啓発に力を入れる傾向が見て取れます(出所:厚生労働省「能力開発基本調査」)。

こうした中で、企業向け研修サービス業界におけるM&A事例としては、2021年11月に英語のeラーニングプラットフォーム「ReallyEnglish」と企業向けオンライン研修ソリューションを提供する「Prospera」を運営する株式会社EdulinXが語学研修を中心に企業・学校法人向けの研修サービスを提供する株式会社アルクエデュケーションの全事業を承継したものが代表的なものとして挙げられます。これは、よりカスタマイズされた対応が必要となる企業向け研修サービス分野においてソリューションを提供する企業が、当該サービスへのニーズの拡大を背景として、顧客基盤を強化するために法人研修領域に強い企業をM&Aで取得するといった意味合いがあるものと思われます。

その他にも、2021年4月に法人向け集合研修サービスの株式会社ヒップスターゲートがダイバーシティ&インクルージョン支援事業に強みを持つ、同業である株式会社グローシップの株式を取得し、子会社化(年月は公表日ベース)するといった、企業向け研修サービス業界において強みを補完する動き、インサイドセールス、MA(マーケティングオートメーション)導入支援を行うブリッジインターナショナル株式会社が2021年2月に公表した、企業向け研修サービスの株式会社アイ・ラーニングの株式をJBCCホールティング株式会社から全株式の譲受といった、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化をプロダクト、人材育成の両面から支援していくという動きも見られています。

企業向け研修サービス業界においては、新型コロナウイルスの影響によりオンライン研修のニーズが高まっており、新型コロナウイルスの影響が鎮静化した後も、こうしたオンライン研修へのニーズが過去に比べて高まることが見込まれるため、オンラインに対応できていない企業向け研修サービスを提供する企業に対して、顧客やノウハウ獲得を目的としたM&Aのニーズは引き続き高まっていくものと思われます。同時に、逆方向の動きとして、オンライン研修のプラットフォームもしくはノウハウを有する企業に対してもニーズが見られていくことと思われます。

その他業界におけるM&A動向について

幼児向け教育、英語を始めとする語学スクール・教室については、前述の通り、資本力の相対的に大きな学習塾・予備校業界がM&Aにおいて中心的な役割を担ってきたと考えられます。これら業界及び上述の企業向け研修サービス業界以外において、今後M&Aが活発化してくると思われる業界として、資格取得スクール、外国人向け日本語学校と考えています。

これは特定の業界において人手不足が常態化していることと、岸田内閣で掲げられている政策の中で、「公的価格の在り方の抜本的な見直し」として「医師、看護師、介護士、さらには幼稚園教諭、保育士、こうした方々など社会の基盤を支える現場で働く方々の所得向上に向け、公的価格のあり方の抜本的見直しを行います」 との発言があったことから、こうした資格に対するニーズが高まる可能性があること、また2019年度に導入された「特定技能制度(特定産業分野について外国人の在留資格を認定する制度)」を拡充し、現在永住権の取得は建設など2業種に限定されているものを、全ての対象業種で永住権の取得を可能とし、家族の帯同を認める方向で制度を見直す方向であるとの報道から、当制度による外国人就労者が増加する可能性があることがその理由となります。

これらの動きは、人材分野と密接に関連しているため、看護師、介護士、さらには幼稚園教諭、保育士等の人材紹介を行なっている企業、外国人労働者派遣を行なっている企業を交えたM&Aの動きとなるものと思われます。

具体的にこのような動きを想起させる事例としては、資格についての違いはあるものの、オンライン難関資格予備校「アガルートアカデミー」など運営の株式会社アガルートが2021年3月の弁護士・法務領域特化型の転職支援に強みを有する人材紹介事業を営むエイパス株式会社の完全子会社化が挙げられます。

これらは一端にしか過ぎず、IT化、制度、社会の変化によって大きく変化する可能性のある教育業界において、M&Aについても、引き続き様々な動きが見受けられるものと思われます。

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