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食品製造業界のM&A動向

2021年12月20日

カテゴリー:業種

業種分類:食品製造

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EC化、スーパーマーケットの競争激化、SDGsへの対応といったキーワードに加えて、冷凍・凍結、包装、物流技術の進化、IT活用による製造、中間・最終流通の変化等付加価値のあり方が変化しており、食品製造業界においても、今後ますますM&Aや企業間提携が活発になることが見込まれます。本稿では食品製造業界の現在の姿から今後の変化の方向性からM&Aについて考察しました。

業界概観

食品製造業の国内生産額は2015年時点において35.7兆円、うち精米・食肉・魚介等の生鮮食品が3.6兆円、最終製品としての加工食品が22.2兆円、食品製造業(2次加工)向けの加工食品が4.6兆円、飲食店向け加工食品が5.2兆円と最終製品として加工食品の占める割合が大きく、加工食品のみに対する卸売、小売、運輸等の流通経費(商業マージン・運賃)の総額が17.2兆円と合わせて、周辺業界の裾野も広い業界です(出所:農林水産省「2015年農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表」)。

製品出荷額ベースで見ると、食肉、乳製品等を含む畜産食料品製造業が6.8兆円、水産食料品製造業が3.4兆円と主菜として用いられる食料品の金額が大きいことは想像に難くないですが、パン・菓子製造業の製品出荷額5.5兆円のうち、パン類が1.7兆円、生菓子が1.2兆円、調味料製造業の製品出荷額2.1兆円のうち、醤油・味噌・ソース・酢以外のその他調味料が1.4兆円、冷凍調理食品が1.3兆円、惣(そう)菜が1.1兆円、すし・弁当・調理パンが1.7兆円と2次加工に分類される分類が相応の規模となっていることが特徴的です(いずれも2019年の数値。出所:経済産業省「工業統計調査」)。また、2016年対比で冷凍調理食品は9.74%増、惣(そう)菜は10.59%増(加えて、レトルト食品は20.07%)と2次加工分野の伸びが目立ちます(食品製造業全体では5.03%増)。

次に、食品製造業の集約度を表すために、従業者が100人以上の事業所の数が全事業所の数に占める割合と、100人以上の事業所の出荷額が全事業所の売上に占める割合を各細分類ごとに計算すると、食品製造業全体では従業者が100人以上の事業所の数が全体の31.3%、売上が全体の88.3%を占めており、資本集約が進んでいる業界と言えるかと思われます(製造業全体では事業所数が7.8%、売上が74.5%)。

出荷額及び事業所数ともに100人以上の事業所の占める割合が高い業種としては、砂糖精製(出荷額:99.6%、事業所数:52.6%)、食用油脂加工(出荷額:99.5%、事業所数:63.6%)、乳製品(出荷額:98.8%、事業所数:62.5%)などがありますが、すし・弁当・調理パン(出荷額:97.7%、事業所数:56.9%)、冷凍調理食品(出荷額:92.6%、事業所数:55.4%)、レトルト食品(出荷額:93.1%、事業所数:57.8%)など上記の2次加工分野も高いことが分かります。

他方、水産食料品(出荷額:72.5%、事業所数:23.0%)、冷凍水産物(出荷額:72.1%、事業所数:31.3%)などの水産物を取り扱う製造業については、水揚げされる漁港が全国的に分散されているおり、漁港の近くに加工場が存在することが多いため、集約度が相対的に低いことが分かります。同様に、豆腐・油揚げ(出荷額:84.8%、事業所数:19.5%)のように日持ちのしない食品を製造する業種も集約度が相対的に低くなっています。また、パン(出荷額:97.9%、事業所数:35.2%)、ビスケット類・干菓子(出荷額:90.1%、事業所数:29.9%)のように、出荷額では大規模事業所に集約されているものの、事業所数では従事者が相対的に少ない事業所が多いロングテール型の業種もあります(上記数値はいずれも経済産業省「工業統計表」より当社計算)。

また、他業種と同様に人材確保も業界の大きな課題となっています。特に、食料品、飲料・たばこ・飼料製造業全体の欠員率は2019年6月末時点において、2.1%と製造業全体の1.7%を大きく上回っており、食品製造業の特色として、専門的・技術的職業従事者(職人を含む製造技術者)の欠員率が5.2%、販売従事者の欠員率が5.8%と目立っており、生産工程従事者も2.2%と製造業全体の1.7%と比較して大きくなっており、製造・販売ともに人材不足の状況となっております(出所:厚生労働省「雇用動向調査」)。

今後の変化の方向性とM&Aニーズについて

食品製造業界の今後の変化の方向性として、①B2C流通におけるEC化比率の上昇、②スーパーマーケットの同業内及び食品販売への参入が活発化するドラッグストアとの差別化、③SDGsの3つが挙げられます。①の「EC化比率」については、2020年の食品、飲料、酒類のB2C-EC市場は2.2兆円と前年比21.13%の伸びを示しました。しかし、EC化率については3.31%と他の物販系と比較して著しく低く、今後普及の進むと思われるネットスーパーや百貨店やお取り寄せなどのグルメ系ECの拡大、生鮮食品を中心としたD2C(Direct to Consumer)の拡大で、増加傾向に変化は無いものと思われます。

②の「スーパーマーケットの差別化」については、ドラッグストアの生鮮食品、惣菜販売への参入が相次いでおり、既存スーパーマーケットとしての差別化が求められています。差別化戦略の一環として、直接流通比率の上昇による競争力のある価格での商品提供や高品質のSB(ストアブランド)、PB(プライベートブランド)への取り組み、特色のある商品を買い付けるバイヤー力の強化などが代表的なものとして挙げられるかと思います。また、先のEC化についても取扱品目の拡大につながるため、食品製造業においても、スーパーマーケットそれぞれの商品戦略に基づいた商品供給により、新たな販路拡大に繋がるものと考えます。

また、③の「SDGs」については、令和元年に「食品ロスの削減の推進に関する法律」施行に見られるような食品ロスへの意識の高まりを背景に、食品ロス削減のためのECの活用、ECを用いた新サービスの誕生、冷凍、コーティング技術やパッケージなどの保存に関わる技術導入、技術革新、脱炭素、タンパク質の安定供給源を見つける流れから代替肉などの新食材開発といった食品製造業界を大きく変えていく可能性のあるテーマとなっています。

また、人材不足も長らく言われているテーマであるため、業務フローやプロセスの改善策として機械化の促進が長らく謳われています。しかし、機械導入には最低限必要な製造量、つまり販売量が伴うことが必要であると思われるため、M&Aの一つの誘因となってくると思われます。

このように規模拡大のためのM&Aニーズ以外にも、上記の「スーパーマーケットの差別化」で述べたようにスーパーマーケットがSB、PB展開のために食品製造業のM&Aを行ったり、「EC化比率の上昇」で述べたように、EC等のDX化を推進させることにより、ブランド力向上や売上を伸ばすことができる可能性のある企業に対して、異業種も含めたM&Aが活発化する可能性も指摘されます。

また、地産品を製造するような企業については、付加価値化の方向性として地域産業の性格が強まっていくため、地域創生ファンド等のファンドや地元異業種企業による地域創生をテーマとしてM&Aも活発になってくるかと思われます。

直近の事例としては、2021年10月に発表された株式会社デイリーはやしによる、わらべや日洋ホールディングス株式会社が新潟県のセブン-イレブン店へ供給していた新潟工場の製造・販売事業を事業譲渡した地域ドミナント戦略の事例、2021年12月に公表されたエバラ食品株式会社による静岡県の液体調味料及び清涼飲料水の製造会社株式会社スギショーテクニカルフーズの株式取得(持分法適用関連会社化)といった製造委託先を関連会社化することによる、生産体制の強化の事例、2021年11月に実施された株式会社刈⽥・アンド・カンパニーのグループ会社が運営する傘下のファンドによるシンセンフードテック株式会社などシンセングループが営むお節事業、⽔産加⼯品事業等の譲受といった、ECを中心とした事業基盤のさらなる強化、2021年11月に実施された新車・輸入車・中古車販売を中心にブランディング事業として飲食、飲食品製造販売等を展開するGLIONグループによる、兵庫県で米菓製造販売を行う株式会社げんぶ堂の取得といったリブランディング、DX化による事業基盤の強化の事例、2021年10月に実施された茨城県を中心に関東一円で豆腐等大豆製品(大豆ミートを含む)の製造・直接販売を行う株式会社染野屋が石川県の豆腐の製造・販売(販売は全国の百貨店・高級スーパー・ホテル・飲食店など)を行う株式会社山下ミツ商店の完全子会社化といった、ブランド・販路の引き継ぎの事例、2021年2月に発表された大阪を中心に展開するスーパーマーケットチェーンを運営する株式会社万代による、持ち帰り弁当の「ほっかほっか亭」を全国に展開する株式会社ハークスレイの子会社であるフレッシュベーカリーの製造及び販売、ベーカリーカフェの営業を行うアルヘイム株式会社の事業取得(より正確には、アルヘイム株式会社の全ての事業を承継した新設分割会社の株式取得)といった、スーパーマーケットチェーンによる食品ブランドを取り込む事例など、上記の類型に当てはまるM&Aが活発に行われております。

また、横ばいで推移する洋生菓子業界における製販・流通を効率化することにより低価格で高品質な製品を提供することにより業績好調な株式会社シャトレーゼホールディングスのように社歴が古くとも新たな価値を提供している企業もあり、全国のパン屋と提携し、独自の冷凍技術とITでB2B、B2C向けにパンを提供するベンチャー企業である株式会社パンフォーユーのように、小規模事業者の多いパン、菓子をはじめとする業界に新たな付加価値を提供する企業も現れてきております。このように、食品製造業界においても製造・流通・販売それぞれの領域で、ITの力も借りながら、変化が起きています。食品製造業界の競争力の本源が商品の質と価格のバランスにあるのであれば、M&Aの領域においても、それぞれの事業体の規模に応じた様々な動きが今後も活発化するものと思われます。

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