ホームM&AアドバイザリービジネスマッチングM&Aマッチングお役立ち情報お問い合わせ

不動産管理業のM&A動向

2021年12月24日

カテゴリー:業種

業種分類:不動産管理

pmImage

不動産管理業は大きく不動産賃貸管理業、マンション管理業、ビル管理業に分類できますが、本稿では、不動産賃貸管理業とマンション管理業に焦点を当てて、今後起こりうる変化とM&Aのニーズについて考察しました。不動産賃貸管理業は資産を有しないストック型の事業として長らくM&Aニーズの高い業種ですが、DXや不動産テック企業による大きな変化が起きつつあり、買手側の取組みによってPMIにおけるパフォーマンスにも大きな違いが生まれてくる業界であると感じています。

業界概観

不動産管理業は大きく、

  • 不動産賃貸管理業
  • マンション管理業
  • ビル管理業
に分類できます。

不動産管理業の総売上規模は、約4.95兆円となっております(出所:総務省統計局「平成28年経済センサス-活動調査」)。その中で、不動産賃貸管理業の市場規模は正確な統計が存在しないものの、住宅向けが約3,000億円、商業・オフィス・その他が約5,000億円と推計されます(住宅向け不動産賃貸管理業の市場規模は、総務省「サービス産業動向調査」の貸家・貸間業の年間売上高に管理委託料率として5%を乗算、同様に商業・オフィス・その他向けは不動産賃貸業の年間売上高に管理委託料率として5%を乗算)。また、②のマンション管理業の市場規模は約9,500億円(マンションの総ストック戸数675.3万戸に、新築マンション一戸あたり平均面積=65.7平米に新築平米あたり管理費178円を乗算。マンションの総ストック戸数は、国土交通省「令和3年度 住宅経済関連データ」、マンション一戸あたり平均面積及び新築平米あたり管理費は、公益財団法人不動産流通推進センター「不動産業統計集」より)。

住宅向け不動産賃貸管理業においては、賃貸管理業登録者あたりの管理戸数が2014年6月の約1,491戸から2018年12月の約1,746戸と約17.0%増えております。この理由としては、民間借家が2013年の1,458万戸から2018年の1,545万戸に約6.6%増加したことや賃貸管理業登録者のサブリース戸数が2014年6月の約156万戸から2018年12月には約299万戸へ約92.1%も増加していることが挙げられます(出所:国土交通省「不動産業ビジョン2030」、総務省「住宅・土地統計調査」)。今後は建て替えサイクルの長期化の一方で、貸家の着工戸数は減少していき、貸家のストック数も2030年には約1,417万戸と緩やかに減少していくことが推計されています(出所:⼀般財団法⼈住宅改良開発公社「賃貸住宅市場の動向と 将来予測(展望)調査」)。

マンション管理業においては、分譲マンションのストック戸数が2020年に675.3万戸と2015年の623.3万戸から8.34%増加と増加トレンドにありましたが、賃貸住宅と同様に世帯数の減少とともに緩やかに減少していくことが見込まれております。

不動産管理会社の変化の方向性とM&Aニーズについて

不動産管理会社はその安定した売上を魅力として、実際に多くの企業から関心を持たれています。他方、賃貸管理業登録者あたりの従業者数は10人程度と推計され、上記賃貸管理業登録者あたり管理戸数が1,746戸であることから、従業者一人当たり175戸ほどの管理数と労働集約的な営業形態と言えるかと思います。また、賃貸管理業登録者の8割が受託金額3,000万円未満と小さく、不動産仲介業や不動産賃貸業との兼業で不動産賃貸管理業を行なっている企業も多数あることが推察されます。他方、不動産賃貸管理業は地理的な営業範囲を広げても効率性が高まらず、あくまでも営業地域内での規模の経済により効率化が図られるということが今まで言われてきました。これはある一定規模に至るまでは正しいと考えられますが、今後は台頭しつつある不動産テック企業がさらなる効率化を推進していくものと考えられます。

例えば、2021年9月に57.3百万米ドルの調達をおこなった米国の不動産テックベンチャー企業であるMynd Property Management(以下、Mynd社)は、不動産オーナー向けに賃貸用戸建住宅の賃貸、保守管理、家賃収納、家賃保証、立退時法廷費用の保証から家賃支払や賃貸状況の管理までをオンラインで提供し、賃貸借人向けには賃貸仲介(物件検索、内覧から契約まで)、家賃支払、家具レンタルや収納保管サービス、防犯カメラ等の防犯機器の販売、引越しをオンラインで提供しています。同時に、不動産投資家に対して購入・売却の仲介、ローンや保険商品の斡旋も行っております。Mynd社のサービスを通じて、不動産投資家は居住地から遠方にある物件にも手軽に投資、管理が可能になるというメリットがあります。

日本においても、上記不動産投資家向けの売買関連サービスの提供の有無は別として、不動産オーナー向けにこのようなサービスの提供を拡充させている企業が出現してきております。

これらサービスの特徴として、物件検索から入居、退去まで賃貸借人の物件に居住する満足度を高めることにより、物件の魅力度、つまり物件の価値を高めるいうことが最終的な目的と考えられるため、保守管理を含めて不動産管理を現地で行う必要性は常につきまといます。この部分が、不動産賃貸管理会社へのM&Aニーズの背景にあるものと考えています。

また、不動産賃貸管理会社の強みとして、不動産オーナーとの関係がその他関連業態と比較して近いことが挙げられると思います。この強みを活かして、不動産オーナー向けに、物件の価値向上策の一つとしてスマートホームの導入支援などの業務も今後不動産管理会社へ期待される分野だと考えられます。スマートホームとは、IoT技術を活用して、スマートフォンやAIスピーカーなどを制御デバイスとして、テレビや照明、給湯器、エアコン、シャッター、インターホン、ロックなどを制御できるようにすることにより、住まいの利便性、快適性、安全性を追求する住宅システムを指し、欧米でも賃料への影響度が定量化されているわけではありませんが、賃貸住宅の魅力度を高め、空室率の低下や賃料上昇につながるのではと期待されています。

スマートホーム以外にも、HEMS(Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の略)の導入により、住まいの光熱費を効率管理するなど、不動産テック分野では不動産オーナーにとって物件の差別化が可能な製品・サービスが既にいくつも生まれており、これらの導入を適切に進めていくことが賃料及び物件価値向上のためにも必要になってくると思われます。これらの推進役として不動産管理会社に期待される役割は大きく、不動産テックの導入に積極的な不動産賃貸業などの不動産関連企業によるM&Aニーズの高まりの一因になっているものと見ております。

マンション管理会社の変化の方向性とM&Aニーズについて

他方、マンション管理業においては既にマンションデベロッパー系を含めて再編が進みましたが、現在でも継続的にM&Aが行われています。また、マンション開発事業を開始したり、新たなエリアに進出する企業も継続的に現れてきているため、常にマンション管理会社へのM&Aニーズは存在します。一方で、マンション管理業は営業地域における規模の経済性が働きやすく、近年では人材不足による人件費の上昇といった要因もあり、M&Aも含めた新たな参入意欲はさほど大きくはないのであろうと推察しています。

また、約8割のマンションが基幹事務を含めて管理事務をマンション管理会社に委託しており、マンションの建替サイクルの長期化や資材価格の上昇による修繕積立金不足への対応や築古になると賃貸割合が高くなる傾向にあるため、管理組合運営の困難化が生じやすいなど、マンション管理業の業務は年々難しくなる傾向にあります。

加えて、国土交通省の「マンション総合調査」によると、2018年時点で築10〜15年のマンションで分譲時に分譲業者が提示したマンション管理業者からマンション管理業社を変更したマンションの割合は14.3%に上り、分譲マンションにおいてはマンション管理の質に不満が高まると比較的早期でもマンション管理業社の変更が行われる一方で、人件費の上昇を管理費に完全に転嫁することが難しく、サービスの削減や仕様の変更で対応せざるを得ないジレンマを抱えている状況にあります。

そのため、マンション管理事業の縮小とマンション管理代行会社の活用をセットで行うことで、固定費を削減しながら、より効率的な運営を行うマンション管理業者が増えてきています。また、これらの企業では、管理事務以外の管理人業務をより効率化されたかたちで請負うアウトソーシングを行なったり、ITを用いて管理人業務そのものや人員配置等の管理人業務の運営の効率化をサポートする企業も現れてきています。これらはマンション管理業者の抱える課題を補完するかたちで解決するアプローチになるため、今まで述べてきたような課題が継続すると見込まれる現状では、マンション管理代行の活用と合わせて、今後伸長していくことが見込まれます。マンション管理代行会社は人材派遣に近い事業形態であるので、採用・教育の効率化の観点からもM&Aによる拡大戦略といったニーズも強まってくるのではと感じています。

最新の記事

ホテル・旅館業界のM&A動向ウェディング業界のM&A動向不動産管理業のM&A動向住宅・リフォーム業界のM&A動向食品製造業界のM&A動向

サービス情報


  • © Concerto Partners, Inc