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ホテル・旅館業界のM&A動向

2022年01月06日

カテゴリー:業種

業種分類:ホテル・旅館

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2021年9月30日の緊急事態宣言以降、ホテル・旅館の客室稼働率は回復途上にありますが、インバウンド訪日者の回復には目処が立たず、ホテル・旅館業界は国内宿泊客の需要が回復時にどのように顕在化するか不透明な中、さまざまな需要、売上喚起策を講じています。こうした中で、ホテル・旅行業のM&Aは動きが活発化してきており、現在の状況の整理及び今後の見通しについて本稿では整理しました。

業界概観

2021年11月のホテル・旅館全体の客室稼働率は41.2%と2019年通年平均の62.7%には及ばないものの、2020年のGo Toキャンペーン時の2020年10月の42.0%に近い水準まで戻してきております(出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」)。

他方、ホテルを組み入れる上場不動産投資信託(J-REIT。対象としてジャパン・ホテル・リート投資法人、森トラスト・ホテルリート投資法人、星野リゾート・リート投資法人、インヴィンシブル投資法人、いちごホテルリート投資法人の6銘柄)の組入物件のADR(客室平均単価)、RevPAR(客室当たり収益(=客室稼働率×ADR))の推移を見ると、2021年10月時点でADRが12,172円、RevPARが8,108円とADRは2021年1月時点の水準、RevPARは2021年7月の水準と稼働率対比で回復が遅れている状況です(注:客室稼働率、ADR、RevPARの数値が開示されている物件の単純平均)。

その理由として考えられるのが、①例年9月、10月はホテル・旅館需要の閑散期を迎えるため、客室単価を上げにくいタイミングであったこと、②現状の客室稼働率水準では需要の価格感応度が高いため、需要喚起のためには客室単価を上げにくかったこと、③(②と関連するものの)2021年9月30日に解除された緊急事態宣言以降においても、国内旅行では近距離旅行を選好する傾向にあり、旅行にかける予算が低水準で推移しており、総体としては宿泊費を抑える傾向にあること、などが考えられます。

そのため、今後のホテル・旅館業の回復には、さらなる客室稼働率の回復、次いで客室単価の上昇といったルートを辿るものと思われますが、感染症の状況及びホテルの新規開業も2020年以降も相次いでいることから、回復タイミングに不透明感が存在する状況です。

今後の変化の方向性とM&Aニーズについて

既存のホテルにおいても、2020年以降次々とリブランディングや改装による需要喚起策を講じており、需要回復期に確実に需要を捉えようとする動きが活発化しています。2021年にリブランディングにより新規開業したホテル・旅館は計38件ありました。その中にはM&Aによってホテル・旅館を買収し、自社のブランドにリブランドしたもの、新たなオペレーターに運営委託し、当該オペレーターのブランドにて運営を開始したと思われるものが計11件含まれております(いずれも当社調べ)。

新規開業するホテル・旅館ともトレンドを一にしますが、ロビー、大浴場等共有空間の充実、居室空間のデザイン性、設備の充実といった立地や宿泊客ニーズに合わせた改装の事例が最も多く、フロントにおけるチェックイン、チェックアウトの省力化によるオペレーション効率化といった都市型ホテルに多く見受けられる改装から、長期滞在ニーズを取り込むための居室空間内におけるキッチンや洗濯機の設置、テレワーク設備の設置等の改装の例も見られます。また、旅館においては大型施設においては、温浴施設やダイニング施設の充実、小型施設においてはスモールラグジュアリー化など、土地・建物の規模や立地に合わせたリブランディングの事例も見られます。

これらリブランディングの事例から見て取れるのは、インバウンド需要の盛り上がりで一旦没個性化してしまった都市型ホテル業界が再度差別化を模索している姿と、インバウンド需要を受けて、それぞれの地域が観光資源を見直し、差別化を図ってきた旅館・リゾートホテル業界がその流れの中で再生を図るという対比的な姿なのではと感じています。

M&A市場においては、2021年12月に公表された、ホテルマネージメントインターナショナル株式会社による勝浦スパホテル三日月と鴨川スパホテル三日月の事業承継が話題となりましたが、この他にも、2021年11月にはグローバルWiFi事業などの情報通信サービス事業を営む株式会社ビジョンが鹿児島のグランピング施設を併設する温泉旅館を経営する、こしかの温泉株式会社の完全子会社化など、2020年以降も活発にM&Aが行われている業界です。

ホテル業界においては、長らく運営受託を行うオペレーターと所有者の分離が進んでおり、オペレーターの入れ替えに伴うリブランディングが頻繁に行われてきたため、オペレーターにノウハウが蓄積されてきた歴史があります。そのため、現在のような厳しい事業環境下でも新たなトレンドを創り出し、業界が回復基調に向かう局面においてもしっかりと需要を掴み取ることができる可能性があります。他方、ホテルのリブランディング、改装、改築には多額の投下資金が必要となるため、オペレーターとしてのノウハウを有しながら、資本力があり、リスクの取れる企業がM&Aに積極的になっているように感じます。

一方で、旅館業においては、地域性や立地の個別性が強いため、オペレーターと所有者による運営と所有の分離が進んでいないものと思われます。しかし、旅館やホテルのプロデュース・運営受託を行う株式会社温故知新のようにバブル崩壊後の金融機関による不良債権処理の一環としての旅館再生ではなく、現代の時流にあったかたちで旅館の経営支援やプロデュースを行う企業もここ10年で台頭してきていることから、立地や周辺環境次第では、自ら旅館を再生させた成功体験を持たずとも、こうした時流にあった再生を手がけることが可能になってきております。旅館の再生に成功体験を持つ企業はもとより、こうした旅館の再生に強い関心を持つ企業がM&Aに積極的になっているというのが旅館業のM&Aの今の姿なのではと感じます。

ホテル業、旅館業何れにせよ、OTA(Online Travel Agentの略)やレベニューマネジメント、ダイナミックプライシングなどIT化の流れを受けて、集客や集客に応じた収益極大化が容易になってきた現在、オペレーター、所有者問わず、設備や施設などのハード、サービスなどのソフトの両方を創造できる、創造することに挑戦するプレイヤーが今後しばらくはホテル・旅館業のM&Aにおいてメインプレイヤーとなっていくのだろうと思います。こうした文脈からは、リスク負担という役割を担うファンドも交えながら、不透明感のある環境下であるが故に、ホテル・旅館業のM&Aに積極的に取り組むプレイヤーの裾野は広がっていくのだろうと感じています。

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