macroeconomy

ますます強まる景気の不透明感を乗り切るM&A戦略

新型コロナウイルス感染症の発生から2年半が経過しようとしており、世界各国のWithコロナ政策に伴う経済活動の再開、地政学リスクの高まりがインフレ、円安を引き起こし、景気の先行きには不透明感が強まっている状況です。こうした中、M&Aマーケットの動向とM&A戦略についてまとめました

新型コロナウイルス感染症の発生から2年半が経過しようとしており、世界各国のWithコロナ政策に伴う経済活動の再開、2022年に入りますます意識される地政学リスクの高まりが原油等資源、穀物の価格を押し上げ、日本と日本を除く各国のインフレ対応、特に金融政策の基本方針の違いから為替は円安方向に大きく触れているなど、一部先進国においてはリセッション(景気後退局面)入りも指摘されるなど、景気の先行きには不透明感が強まっている状況です。こうした中、M&Aマーケットの動向と選択肢の一つとしてM&Aをどのように考え、整理するべきか考察してみました。

新型コロナ以降のM&Aの動向

新型コロナウィルス感染症の感染拡大は広範囲にわたる経済活動に影響を与え、既に発生から2年が経過した2022年8月末現在、第7波の収束が見出せない中、リモートワークの普及やインバウンド旅行需要の消失、未だ感染動向に大きく影響を受ける外食や国内旅行需要など、社会経済全体に未だ大きな影響を与えております。

新型コロナウィルス感染症が発生した2020年からのM&A市場に目を向けてみると、緊急事態宣言が発出された2020年、特に前半は譲受(買い手)側の業績、資金繰りに対する影響を見極めたいという動きからM&Aの件数は落ち込んだものの、2021年には回復し過去最高を更新し、2022年に入っても堅調な動きが続いています。

これらは、日本企業の経営戦略としてM&Aを活用することが一般的になる中、事業領域の選択と集中のために事業の切り出し(カーブアウト)を積極的に行う企業が増加していること、幅広い業界においてAIやDXといったデジタル領域の強化が緊縛の課題となっていること、そして引き続き人手不足、後継者不足といったM&Aが一つの解決策となりうる社会的な課題が継続していることの3つがM&A件数の増加要因として挙げられます。

加えて、円安、物価高が企業業績を含む景気に影響を与える可能性が高まっている

日本をはじめとするアジアにおいては新型コロナウィルス感染者数の増加に伴い、経済活動が停滞する傾向が続く一方で、海外、特に欧米においては感染者数いかんに関わらず経済活動を再開する動きが定着しつつあります。そのため、グローバルサプライチェーンがコロナ以前の状態に回復せず、原油などの天然資源や穀物などの原材料価格の上昇や半導体その他の産業製品の不足による広い分野での物価上昇が見られています。

加えて、ウクライナ情勢の影響による一段の原油、天然ガス価格の上昇、物価上昇(インフレ)を抑制するための欧米各国の金融引き締めに拍車がかかる一方で、緩和型の金融政策を継続している日本円の下落により、輸入産品の価格は大幅に上昇しています。

日本政府も食料品・エネルギーを中心に産業全体の仕入価格の上昇を抑制する政策を採用することにより、物価上昇へ対応しようとしていますが、それでも物価上昇が抑えられているとは言えない状況です。

さらに、日本では労働市場が逼迫して賃金が上昇するという現象が起きづらい構造があり、物価上昇がこのまま継続すると、実質賃金の減少による消費の減退を通じて景気にマイナスの影響を与える可能性があります。

現状では物価上昇は一定程度に抑えられていること、新型コロナウィルス感染症対策も行いながら経済活動を再開させようという動きにより、景気動向を示す各種指標が顕著に悪化している訳ではありませんが、物価上昇と円安により、景気の先行き不透明感は増しているということができるかと思います。

景気とM&Aサイクル

景気悪化局面におけるM&A動向のシナリオとしては、リーマンショックや新型コロナウィルス感染症の第一波のときのような外性的なショックではないため、急激にM&Aの動きが止まるといったことが起こる可能性は低いと考えております。逆に、景気悪化局面の入口においては、事業ポートフォリオの見直し、特に集中と選択によって景気悪化に対する耐性をつけようとする企業の動きや、本格的に景気が悪化する前に事業承継や事業基盤の強化といった経営上の課題に対する解決への道筋を立てたいという動きが活発化することにより、M&Aが活発に行われる可能性が指摘されます。

このような動きが一巡すると、譲渡(売却)側には景気回復期までM&Aの検討を差し控えるといった動きと、さらなる業績悪化により救済色の強いM&Aを検討する動きが混在化するものと思われます。このタイミングにおいては、譲受(買収)側も景気回復の兆しが見えるまではM&Aに積極的、特に価格面において強気な姿勢を取ることができなくなり、需要と供給のバランスから、件数、価格共に低下することが一般的であるように思われます。

こうして景気が底打ちし、回復の兆しが見えてくると、企業業績にも先行きに対する楽観的な状況が生まれてくるため、M&Aの動きが活発化する、件数が増加することに先んじて価格(特にマルチプル(EBITDA倍率や年倍法の年数))が上昇をし始めます。

そして、企業業績の回復と共に、価格に追随して件数が増加していく、これが景気循環とM&A動向のサイクルです。

もちろん現在の円安に恩恵を受けやすい輸出に携わる企業もありますので、このサイクルが全ての業種で同様に起こる訳ではありませんが、一つの考え方として参考になるのではと思います。

大企業のみならずM&Aが定着することにより変化する経営者の意識

M&Aの目的として、「時間を買う」という表現をする方も多いですが、中小企業の関与するM&Aが一般的になるにともなって、譲受(買収)側の検討のスピードや柔軟性が高まっています。

過去であれば、一企業をM&Aによってグループもしくは同じ会社に取り込むことに慎重あった企業も、一から同じような事業を立ち上げるには環境の変化が激しく、立ち上げたは良いものの、最も成長が望める時期を逸してしまったなどということが容易に想像ができる環境にあります。そのため、M&Aを成長戦略の一つとして考えている企業はより積極的に、スピード感をもって検討するようになってきています。また、スキーム、ストラクチャーといったM&Aの形態についても、柔軟に検討ができる企業も増えています。

そのため、事業譲渡によりすばやく事業ポートフォリオを見直す、一つの企業で譲渡先を見つけるには困難な事業ポートフォリオを有している場合に分社化や事業譲渡で複数の企業に譲渡するなどということも検討が可能な時代になっています。

まとめ

先日、当社主催のセミナーにて過去自身で立ち上げられた企業をM&Aで譲渡された方のお話の中で(セミナーの内容はこちらから)、「ちょっとでもM&Aが頭によぎったら、とりあえず進めてみるということが大切かと思っています。情報収集するだけでも自社の事業や自分自身を客観視できますし、頭に浮かぶというのは、どこかでそういう選択肢を考えていると思うんですよね。だからとりあえず進めてみる。嫌だと思えばストップすればいいだけですから。そんなスタンスがとても大切だと思っています。情報を得ることで納得感のある決断ができますし。」というお言葉をいただきました。

事業環境の変化が激しく、景気の先行き不透明感が強まっている今こそ、このような考えでお気軽にご相談いただき、私どもは真摯にお考え、ニーズに沿ったかたちで対応していきたいと常々精進しています。

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